刺され損ねた。

童貞の恋人が右手であるように、メンヘラの恋人もまた、右手なのである。

お嬢さん

私とおなじ、フルタイムでパートタイマーとして働く主婦、資産家らしい。驚いた。しかもそれをちっとも自慢しないから、いま聞くまで、私はそれを知らなかった。家にお金があるのに、どうしてパートなんてするんだろう。運動のため?教育のため?
私だったら、家に余裕があるのなら、できる限りは家にいたい。良き妻として、家事をしっかり、やりたい。それでも、金銭に困ることこそ避けたい。それならと、率先してパートに出たい。でも家事や育児をきちんとこなしたいので、半日だけにしたい。つかれた主人を癒すだけの体力を残して、それから睡眠をとる。愛されるなら、そんな妻としてがいい。その人と比べたら、こんな理想は、ただの横暴でしかなくて、くずなんだけどね。両親が共働きで、愛情のない家庭だったから、反対の家庭を築きたいんだ。育ちたかった理想の家庭を築くんだ。私の考えが、あまいのだろうか?なんて。その人と私とじゃあ、なにかが根っからきっと違うんだ。

パート先には、理想のお母さんがたくさんいて、でも誰も私のお母さんではないから、本当に、もう、いじらしい。
いつも明るくて、楽しそうに仕事して、料理が上手。文句をいわず、自慢もせず、誰からも嫌われず、みんなに愛されて、わが子に慕われて、とてもいい奥さん。ずるい。